英語長文の効果的な読み方
英語長文を読解する力は、大学受験で大きな得点源となります。しかし、多くの高校生が「時間内に読み終えられない」「内容が理解できない」と悩んでいるのも事実です。今回のコラムでは、理論や研究に基づいた英語長文の効果的な読み方を解説します。保護者の皆さまにもイメージしやすい形でご説明するので、大学受験のみならず、高校受験のお子様への学習サポートにもお役立てください。
今すぐできる!読解中の戦略
英語長文を読む際には、以下の3つの戦略を使うと効果的です。
パラフレーズ(言い換え)に注目する
今回のコラムで皆さんに最も伝えたいのは「パラフレーズに注目する」ことです。詳しく解説します。
例えば、本文中で以下のように表現されていたとします。
He is famous for his generosity.
(彼は寛大さで有名だ)
この場合、「本文中で説明されていることについて正しいものを選びなさい」のような設問の選択肢の中では
ア. He is well-known for being kind.
(彼は親切で知られている)
といったように、表現が別のものに切り替わっていることがほとんどです。
今回のケースでは、”famous” と “well-known” はほぼ同じ意味を持つ言葉であり、いずれも「よく知られている」というニュアンスを含んでいます。また、”generosity”(寛大さ)と “kind”(親切)は直接的な同義語ではありませんが、文脈において似た特質を表しています。
選択肢の表現は本文の意味を維持しつつ、異なる言葉遣いで表現されています。このような類似した意味の言葉や表現を使ったパラフレーズ(言い換え)は、大学受験英語の長文問題で頻繁に見られます。
研究によれば、言語学習者は類似する単語を同時に学習することで、それらの微妙な違いを理解しやすくなるとされています(Schmitt et al., 2020)。そのため、受験生は類義語をセット(例: kind, generous, thoughtful)で学ぶことで、長文読解のパラフレーズ(言い換え)問題に対応しやすくなります。
「単語をしっかりやろう」と、このコラムをご覧のほとんどの皆さんはお考えだと思いますが、実際にこういう形で必要になることを意識するだけで、単語学習のモチベーションにも繋がるので、ぜひ意識して学習を進めてみてください!
以下のような具体的なアクションを起こしましょう!
- 単語帳をある程度抑えたら、類義語を意識して学習をすすめる
スキミング
スキミングとは、文章全体を細部まで読み込まずに、主題や要点を素早く把握する読み方です。時間を節約しながら長文の骨組みを理解することができるため、効率的に読解するためには、この技術が欠かせません。特に大学受験のように時間制限が厳しい試験では、この技術が非常に有効です。
具体的に以下のポイントに注目して読み進めることで、スキミングを実行してゆきましょう。
タイトルと見出しを確認する
まず、タイトルと見出しがある場合には、そちらを先に確認することで、本文のテーマや大まかな流れをつかむことができます。
例えば、タイトルが “The Impact of Climate Change on Agriculture” であれば、「気候変動が農業に与える影響」という内容が中心になることが予想できます。
最初と最後の文をよく読む
本文の最初と最後・各段落の最初と最後の文(≒各段落における結論)は、筆者がその段落で述べたい要点を示す場合が多いです。特に、「各段落における結論」には筆者の主張や要約が含まれていることが多いので注意深く読む必要があります。
キーワードとトリガーワードを意識する
本文中に何回も出てくる重要な単語(キーワード)や、因果関係や転換点を示す接続詞(トリガーワード)を追いかけると、文章全体の構造を素早く把握できます。例えば、”However” や “Therefore” といった接続詞に注目すると、筆者が新しい視点を提示したり、論理を展開している箇所を特定しやすくなります。
スキャニング
スキミングが文章の大枠を効率的に捉えるための技術であるのに対して、スキャニングは特定の情報を素早く探し出すための技術です。設問に関連する情報を効率的に抽出する際にとても有効です。
設問の先読みをする
設問を読み、探すべき情報やキーワードを明確にします。具体的には「特定の固有名詞・専門用語」や「繰り返し使われる単語」、「日付や数字」などが挙げられます。設問を先に読んでおくと、本文を読解している間に「ムム、ここさっき聞かれていたな」と気づけることがあります。
文章全体を視覚的に追う
文章を上から下へと素早く目で追い、設問の先読みで見つけたキーワードに関連する箇所を見つけます。この際、キーワードが太字やイタリック体になっていたり、目立つ形で書かれている場合があります。入試問題では目立つ形になっていないことが多いので、より注意深く見ていく必要があります。
見つけた箇所の前後を精読する
キーワードを含む箇所を見つけたら、その周辺をしっかりと読み込みます。スムーズに見つかればよいのですが、実践ではキーワード自体がパラフレーズされていたり、逆説的に表現されていたりして、わかりにくい場合があります。長文問題が難しく感じるのは、これらのような原因があります。
とにかく事前準備が鍵
ここまでご紹介した読解中の戦略をご覧になった皆さんは、英語長文を効率的に読むためには事前準備が重要なことを薄々感じているかと思います。今まで、「なんとなく必要そう」だから単語や文法を勉強してきた方も多いかと思いますが、「なぜそうなのか」を理解できれば、勉強に対する納得感が全然変わってきます。改めて、どうして「事前準備が大切」かをまとめますので、しっかり踏まえたうえで学習を進めましょう。
語彙力を強化する
先述の「パラフレーズに注目する」や「スキミング」を素早くすすめるには、語彙力の強化が必要不可欠です。
また、長文読解においては、未知の単語が多いと読むスピードが大きく低下してしまうことが指摘されています。近年の研究によると、語彙力の向上は文脈理解だけでなく、記憶保持能力にも寄与することが分かっています。(Schmitt et al., 2020)
以下のような具体的なアクションを起こしましょう!
- 単語帳やカード・アプリを活用し、反復学習で語彙を増やす
- 覚えにくい単語は類義語から覚えてみる
- 単語暗記の復習スケジュールを立てて計画的に実行する
文法の基礎固めをする
文法は英文構造を理解するための「地図」のようなものです。これが曖昧であると、ここまで紹介したいずれのテクニックも正しく行うことができません。特に、高校英語でよく出る文法項目(関係代名詞、分詞構文など)を理解していると、複雑な英文も容易に解釈できます。また、文法学習の繰り返しは、読解に必要な作業記憶の負担を軽減することが示されています。(Ellis, 2016)
以下のような具体的なアクションを起こしましょう!
- 文法問題集を1冊に集中して学習をすすめる
- 自分が間違った問題をしっかりと分析(単語がわからなかった・パラフレーズに対応できなかったetc…)し、復習する
英語長文の効果的な読み方まとめ
英語長文読解において、パラフレーズ、スキミング、スキャニングはそれぞれ異なる目的を持ちながら、試験対策や実力向上に欠かせない技術です。
パラフレーズ
言い換え表現を理解する力は、問題文と選択肢を正確に結びつけるために必要な力です。類義語や文構造の変化を見抜く練習を重ねましょう。
スキミング
文章全体の要点やテーマを短時間で把握する技術です。段落の冒頭や結論部分を中心に読むことで、全体像を効率的につかめます。
スキャニング
特定の情報を素早く見つけ出すスキルです。特定のキーワードや固有名詞、日付・数字に集中することで、解答の根拠を迅速に見つけられます。
これらの技術を正確に用いるために必要な勉強は以下の通りです。
語彙力を強化
文法の基礎固めをする
目的意識を持って、学習に取り組みましょう。
単語や文法の勉強方法などについてのコラムも執筆しているので、よろしければコチラもご覧ください!
効率的な学習を積み重ねたい方へ
今回ご紹介した英文長文の効率的な解き方を身につけるにはしっかりとした基礎力の定着が大前提です。
大学受験専門塾Vistudyでは、ひとりひとりにとって効率的な学習をすすめるサポートを徹底指導しています。
成田市には英語系の学科を持つ高校があるので、地域周辺の英語のレベルは比較的高いと言えます。効率的な学習を積み重ねて、ライバルたちと差をつけていきましょう!
参考文献
- Rayner, K., Schotter, E. R., Masson, M. E., Potter, M. C., & Treiman, R. (2016). So much to read, so little time: How do we read, and can speed reading help? Psychological Science in the Public Interest, 17(1), 4-34.
- Grabe, W., & Stoller, F. L. (2019). Teaching and Researching Reading. Routledge.
- Schmitt, N., Jiang, X., & Grabe, W. (2020). The relationship between vocabulary knowledge and reading comprehension: A meta-analysis. Language Learning, 70(2), 258-298.
- Lund, E. (2021). The Role of Multimodal Input in Language Learning. Journal of Educational Psychology, 113(4), 749-762.
- Roediger, H. L., & Butler, A. C. (2011). The critical role of retrieval practice in long-term retention. Trends in Cognitive Sciences, 15(1), 20-27.