英単語を科学的なアプローチから覚えてみる
英単語や外国語の単語を覚える方法について、科学的な根拠や論文に基づいた効果的なアプローチを紹介します。
これから紹介する方法は、実験結果や研究に裏付けられたものですので、大学受験生以外にも、高校1年生や中学生などの学習初級者にも実践しやすく、効果的に単語を記憶する手助けになるでしょう。
わかりやすくするために少ない文章量で書いていますが、もう少し深堀したい方は脚注や参考文献に具体的な研究者や論文について記載してあるので、そちらも調べてみてくださいね。
間隔を空けて復習する(スペースド・リピティション)
この学習方法は、新しい単語を学んだら、最初は1日後、次は3日後、さらに1週間後、という具合に復習の間隔を広げていくものです。これは、「スペースド・リピティション(間隔反復)」という学習法で、単語を一度覚えた後、時間を空けながら何度も復習するという方法です。このアプローチは、心理学者エビングハウスの「忘却曲線」1に基づいています。
新しい単語を学んだら、最初は1日後、次は3日後、さらに1週間後、という具合に復習の間隔を広げていきます。この方法を実践するためには、スペースド・リピティションを利用したアプリやカードを使うと便利です。当塾でもスペースド・リピティションを活かしたアプリを採用していますが、他には「Anki」や「Quizlet」などがあります。これらのアプリは、復習すべきタイミングを自動的に調整してくれます。
結びつけて覚える(二重符号化理論)
この学習方法は、単語「apple(リンゴ)」をただ「apple=リンゴ」と覚えるのではなく、「赤くて丸い、甘い果物」という具体的なイメージを思い浮かべたり、「apple pie(アップルパイ)」といった関連する単語やフレーズを一緒に覚えると、記憶が強化されるものです。このように、単語を記憶する際、単語自体を無理に暗記しようとするよりも、その意味や使われる場面を連想するほうが記憶に残りやすいことが、認知心理学の研究2で示されています。
また、語源を利用することも効果的です。例えば、英語の単語「telephone(電話)」は、ギリシャ語の「tele(遠く)」と「phone(音)」から来ていることを覚えると、意味をより深く理解しやすくなります。意味や語源に関連づけて覚えることで、単語が記憶のネットワークの中に組み込まれやすくなります。
文脈で覚える(文脈依存記憶)
例えば、単語「run(走る)」を覚えるとき、「I like to run in the morning(朝に走るのが好きです)」という文で学ぶと、その単語がどんな意味や使われ方をするか、より具体的に理解できるようになります。英会話などでは一般的ですが、単語は単独で覚えるのではなく、その単語が使われる文章や会話の中で学ぶことが推奨されています。
単語は文脈の中で覚える方が長期的に記憶に残りやすいことが、多くの研究で示されています3。これらの研究では、単語を単独で覚えた場合に比べて、文脈の中で覚えた方が理解度と記憶の定着率が高かったとされています。文脈を使って覚えることで、その単語がどのような状況で使われるか、どんなニュアンスがあるかを理解しやすくなります。『システム英単語』のような英単語帳では全ての単語に短文が併せて掲載されているので、ぜひ活用してみてください。
自分で能動的に思い出す(アクティブリコール)
覚えた単語をそのままにせず、実際に自分自身で能動的に思い出す(再生する)ことが、記憶を定着させるのに効果的です。心理学者ロバート・ローディガーとジェフリー・カーピックによる「再生効果(retrieval practice)4」という理論によると、覚えたことを積極的に思い出す作業が記憶を強化することがわかっています。
言い換えると、インプットした知識をアウトプットすることが効果的であると言い換えることができます。例えば、単語帳を使って意味を隠し、逆にその単語を思い出して書いたり声に出したりすることで、より深い記憶が定着します。また、他の人にその単語を教えることも有効です。教えることで、自分の理解が深まり、記憶の定着が促進されます。
勉強のやり方において、しばしば「インプットだけではなくアウトプットもしよう!」と言われますが、それは理にかなった学習の進め方であるということですね。当塾でも頻繁に確認テストを実施し、再生効果に基づく学習を強化しています。
番外編:睡眠と休息の重要性
最後に、睡眠が記憶の定着に与える影響についても触れておきましょう。研究によれば、学習した後に十分な睡眠をとることで、脳が情報を整理し、長期記憶として保存されやすくなります。特に、睡眠中に記憶が強化されることが示されているので、単語を覚えた後は、しっかりと休息を取ることが重要です。
まとめ
外国語の単語を効率よく覚えるためには、以下の4つの学習方法が最適です。
- 間隔を空けて復習する(スペースド・リピティション)
- 結びつけて覚える(二重符号化理論)
- 文脈で覚える(文脈依存記憶)
- 自分で能動的に思い出す(アクティブリコール)
一見時間がかかってしまう覚え方に思いますが、ここまでに挙げた学習方法を併用することで、より効率よく復習できるようになるので、長いスパンで見た時に時間や労力を抑えることができます。これらの方法を組み合わせることで、単語の記憶はより定着し、語学学習が効果的に進むでしょう。
また、英語の学習には文法の学習も必要不可欠です。
今回と同じ観点から勉強方法をご紹介していますので、ぜひ併せてご覧ください。
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脚注
- エビングハウスの研究によると、”頭で記憶したものは最初は忘れやすいが、復習の回数を重ねるにつれて覚えるのにかかる時間や労力が少なくなっていく”ことが示されています。一般的に、『忘却曲線』が”覚えたことはすぐに忘れてしまう”ということを示していると誤解されがちですが、実際は”適切なタイミングで復習を行えば、記憶の保持期間を大幅に延ばすことができる”ことを示した研究であることは覚えておきたいです。 ↩︎
- Allan Paivioによって提唱されたDual Coding Theoryという理論が有名です。この理論は、情報を視覚的・聴覚的に処理することが、記憶を強化するというものです。この理論によれば、視覚と聴覚を同時に使うことで、情報が複数のチャンネルを通じて処理されるため、記憶に残りやすくなるとされています。語学学習では、単語の音声を聞きながら、その単語の意味や書き方・イメージを五感で触れることが、記憶の定着に効果的だとされています。 ↩︎
- 特にThe Impact of Context Levels on Vocabulary Learningという研究では、「高度な文脈」(文章やパッセージ)で単語を学ぶグループが最も高い記憶保持を示し、逆に文脈がない状況では効果が最も低かったことが確認されています ↩︎
- 再生効果(retrieval practice)とは、学習した情報を「思い出す」ことを意図的に繰り返すことで、記憶を長期的に定着させる学習法のことです。これは単に教材を読む(インプットする)よりも、学習内容を積極的に取り出そうとする(アウトプットする)方が、記憶の強化に効果的であるという理論に基づいています。 ↩︎
参考文献
- Ebbinghaus, H. (1913). Memory: A contribution to experimental psychology. Teachers College, Columbia University.
- Paivio, A. (1971). Imagery and verbal processes. Holt, Rinehart, & Winston.
- Clark, J. M., & Paivio, A. (1991). Dual coding theory and education. Educational Psychology Review, 3(3), 149–210.
- Barimani, S., & Naraghizadeh, M. (2013). The effects of context degrees on vocabulary learning and retention. International Journal of Education and Literacy Studies, 1(2), 7–12.
- Bolger, P., Balass, M., Landen, E., & Perfetti, C. A. (2008). Contextual variation and definitions in learning the meanings of words. Discourse Processes, 45(2), 122–159.
- Karpicke, J. D., & Roediger, H. L. (2008). The critical importance of retrieval for learning. Science, 319(5865), 966-968.
- Roediger, H. L., & Butler, A. C. (2011). The critical role of retrieval practice in long-term retention. Trends in Cognitive Sciences, 15(1), 20-27.