パターンプラクティスを用いた文法の勉強方法について

文法学習は大学受験生にとって英語力向上の基礎でありながら、多くの受験生が詰めきれていない分野でもあります。
単なる暗記に頼る学習は一時的な効果しか期待できず、長期的な成果にはつながりません。
今回のコラムでは、科学的根拠に基づく「パターンプラクティス」という方法を用いて、文法学習を効率化する方法を解説します。

リーディングやライティングの質もあがりますが、特にスピーキングにおいて威力を発揮するので、英検対策を視野に入れている方はぜひ最後までご覧ください!

パターンプラクティスとは?

パターンプラクティスは、特定の文型や構文を繰り返し練習することで、言語のパターンを自然に身につける学習法です。この手法は、1950年代にアメリカの言語学者チャールズ・フリーズや心理学者B.F.スキナーによって広められ、応用言語学や教育学において広く認知されています。パターンプラクティスは以下のような特徴を持ちます。

  • 反復練習
    • 同じ構文を繰り返すことで、瞬発的に文法を使えるようになる
  • 応用力の向上
    • 文法知識を実際の4技能(スピーキング・リスニング・リーディング・ライティング)に活かせるようになる
  • 柔軟な対応
    • 実際の使用場面を想定した練習が可能

実践方法

具体的なパターンプラクティスの実践方法を以下に示します。
一番大事なのは、最初は自分だけの力で無理なくできる範囲で実践することです。

まずは基本文の選定

自分が苦手とする文法や受験頻出の文法事項を選びます。
例えば、仮定法が苦手な場合は下記のような文章を基本文として選びます。

If I had more time, I would read more books.
(もしもっと時間があれば、もっと本を読むでしょう。)

次に基本文から一部だけを変えてみる

①単語だけ変えてみる

If I had more money, I would travel the world.
(もしもっとお金があれば、世界中を旅するでしょう。)

If I had better shoes, I would run faster.
(もしもっと良い靴があれば、もっと速く走れるでしょう。)

If I had enough courage, I would speak up.
(もし十分な勇気があれば、意見を言うでしょう。)

②時制を変えてみる
文法の基本を習得する程度であれば、このレベルまでで十分です。

If I have more time tomorrow, I will read more books.
(もし明日もっと時間があれば、もっと本を読むでしょう。)

If I had had more time, I would have read more books.
(もしもっと時間があったなら、もっと本を読んだでしょう。)

If I have more time next week, I might read more books.
(もし来週もっと時間があるとしたら、もっと本を読むかもしれません。)

最後に色々と応用してみる

このレベルでは、ご自身が入試問題に取り組んだり、英検などの受験でスピーキングが必要であったりといった場合に有効です。現在習得している他の文法事項を活かして、以下のように様々なバリエーションに変化させて取り組んでみるとよいでしょう。仮定法では時制の意識が重要になりますから、時制の練習を並行して学習できると一層効果的ですね!

If I had known about the event earlier, I would be attending it now.
(もしそのイベントについてもっと早く知っていたなら、今頃出席しているでしょう。)

If I were to have started the project last year, I could be seeing results by now.
(もし昨年そのプロジェクトを始めていたら、今頃結果が見えていたかもしれません。)

If I had practiced more diligently, I might have been chosen for the team last month.
(もしもっと真剣に練習していたなら、先月チームに選ばれていたかもしれません。)

If I had been studying abroad at the time, I wouldn’t have met you.
(もしそのとき留学していたら、あなたと出会うことはなかったでしょう。)

また、以下の通りに変化させてみるのも非常に有効です。

  • 平叙文から疑問文にしてみる
  • 能動態から受動態にしてみる

音読も忘れずに

音読をすることで、より記憶定着を高めることが科学的に証明されています。
可能であれば、先生や友達と一緒に取り組んで、フィードバックをもらえると一層効果的です!
詳しくはこちらのコラムの「マルチモーダル学習」で触れていますので、併せてご覧ください!

パターンプラティクスの注意点

注意点

パターンプラクティスを効果的に活用するためには、以下の点に注意してください。

  • ただの暗記にしない
    • パターンプラティクスをただの暗記にしてしまうと、意味がありません。パターンの中から共通している文法事項を意識しながら、学習に取り組みましょう。
  • 難しくしすぎない
    • 難易度を上げすぎてしまうと、英文解釈の領域に差し掛かってしまうこともあります。あくまで文法を習得した上で、実践力や瞬発力を養う練習であると割り切りましょう。
  • 闇雲に繰り返さない
    • 必ずゴールを設定するようにしてください。例えば以下の通りです。
  1. 仮定法の基本を押さえる
  2. 解けなかった問題の一節をマスターする
  3. 英検の過去問の傾向に慣れる

目的なく延々と繰り返してしまうと、せっかくの効率的な学習方法が台無しです。必ずゴールを設定し、それに向かって学習を進める意識を持ちましょう。

まとめ

パターンプラクティスは、科学的根拠に基づいた効率的な文法の勉強方法です。受験英語に必要な文法知識を効果的に習得し、実践力を高める手段として最適です。自分に合った方法で取り入れることで、文法の弱点克服に大きく寄与するでしょう。

パターンプラクティスが効果的である理由は、以下の研究によって裏付けられています。

  1. 自動化理論(Anderson, 1982)
    • 繰り返し練習を行うことで、学習初心者が文法のルールを意識せずに使用できるレベルまで到達することが可能
      → 受験生が試験本番で制限時間内に解答を完了するために必要な速度の獲得が見込める
  2. 記憶の強化(Baddeley, 1997)
    • 短期記憶から長期記憶に移行する際、反復が重要な役割を果たし、パターンプラクティスはその反復を効果的に行う手段である
  3. コミュニカティブ・アプローチとの補完性(Ellis, 2003)
    • 実際の使用状況を想定しながら練習することで、単なる暗記では得られない応用力が身につく

効率よく学習をすすめたい方へ

今回ご紹介した勉強方法は、あくまで勉強の取り組み方に過ぎません。特に、パターンプラティクスが正しく実践できず、間違った方法になってしまう可能性もあり得ます。そうならないために、プロのコーチが徹底してひとりひとりの学習を監修する必要性が出てきます。
また、大学受験ではこのような取り組みに加えて、参考書の配分や志望校の対策といったひとりひとりに最適化した受験戦略が必要不可欠です。

大学受験専門塾Vistudyでは、科学的根拠に基づく学習方法を元に、少人数の定員制を活かしたプロコーチの指導が受けられます。
成田市近辺で大学受験を目指している受験生のみなさまは、ぜひ無料カウンセリングにお越しください!

参考文献

  • Anderson, J. R. (1982). “Acquisition of cognitive skill.” Psychological Review, 89(4), 369-406.
  • Baddeley, A. D. (1997). “Human Memory: Theory and Practice.” Psychology Press.
  • Ellis, R. (2003). “Task-based Language Learning and Teaching.” Oxford University Press.
  • Fries, C. C. (1945). “Teaching and Learning English as a Foreign Language.” University of Michigan Press.
  • Skinner, B. F. (1957). “Verbal Behavior.” Appleton-Century-Crofts.